ホワイトデイと革命の余波

 おいおい、ハッピーヴァレンタインズデイというかひっくり返ってホワイトデイだったんじゃないか、あわや、という感じのトーキョーですがよく考えると、女子が男子にチョコをプレゼントというルールが壊れて友チョコとか男でも可とかになってしまったのでもうホワイトデーもブラックデーも変わらねえよもう笑、という象徴的な天気だったわけです。上京してからというもの、2月14日にクラスメイトと遭遇→ドキドキというシチュエイションを失ってしまいまして(女子がチョコ作りの疲れからか自主休講するため)、「今年こそチョコが欲しいなあ」などと日曜日のライヴの常連のご婦人(ざっと70歳くらいのとても素敵な)に打ち明けましたところ「いいわねぇ、私が若い頃はそんなヴァレンタインなんてないし色恋沙汰とは無縁の世界だったわよ。女子校だったしねえ」と返され、そりゃあ女子校となればそうだな、とそのてよだわ言葉交じりに納得した直後「あ、そういえば」と返されたので駅で待ち伏せしてアタックしたうれしはずかし話が聴けるのか知らん、と僕は思ったのです。そして次に「戦争があってね、」と始まったので瞬間的に唾を飲み込んで(ごくり、という音がまじで聴こえた)、そのご婦人の青春時代にトリップしてしまったのです。




 彼女は中学校に通う女学生。しかし開戦とともに学校は休校。クラスみんなで工場に働きに行くことになって飛行機や機械のネジなどを作っていた。タイムカードもお給料もあったそうな(皆様ご想像の通り僕はここで爆笑した、しかし全て学費と称し学校に吸い取られたため手取りは0)。空襲があると防空壕に潜った。隣の家の窓は滅茶苦茶になった。何故か自分の家は無傷で。
 彼女の家には若い男が居候していた。しかし赤紙で戦争に行くことになり彼は家を出ることになった。彼の友人たちが彼女に見送りに行ってあげてくれとせがむので面倒くさがりながら朝早く起きて家族みんなでその若い男を東京駅まで見送りに行くことにした。
 予定の電車が到着しみんなに別れを告げる男。彼が最後に挨拶をしたのは眠い目をこする彼女。男は近寄り耳元で「ずっと好きだった」と告げました。その刹那15才前後で恋だの愛だの知らぬ彼女は驚き硬直。動けない。そのまま電車は男を乗せ去った。ただ立ち尽くしてそれを見ていた。





 「いやね、あれはおどいたわよう」と話を終えたご婦人と立ちすくむ若き日の彼女とその思い出話に呆然とする僕がいると同時に、戦争を前に愛を告白して去った男とチョコレートを欲しがり居座る男がいたわけです。何というリアリズム。戦争体験者の話とは違う種類のリアルというか、飾り気の無い日常があったという驚きよね。タイムカードを押してネジをつくり防空壕に飛び込んだ少女がいたってことよね。自分より10くらい年下の女の子に恋をして戦争に行った男がいたという事実よね。何が義理チョコ、友チョコだよ笑、これが本当のマイファニーヴァレンタイン。笑っちゃうでしょほんと、御菓子工場に踊らされちゃってさ。チュニジアもエジプトもイタリアもヤバいんだってよ、この展開70年代の学生運動かよ。次は日本でゆとり世代が暴れるぜ、働けなくしやがってよ、今年内定率50パーセント切ったんだぜ。と軽口を叩きながらチャリンコを漕ぐ(雪ですべりながら)。




ライヴ予定など

2.17(thi)コイケ助教授の基礎理論講義3
@明治大学10号館
start1900
今年1発目の理論講義はいよいよ実学に。1話完結型の講義なので前回来ていない方も気兼ねなくどうぞ。
ダイアトニックコードを基にJポップを巡るコード進行を扱おうと思っております。
東京事変やAKBもXジャパンもミスチルもドレミファソラシドでできてるんだー笑、となることを期待しつつ。
チャージフリー。戦争経験の無い男女が対象です。学生であっても無くても可。学歴不問。特にDJの方歓迎。波形ばかり編集してないでたまには平均律にチューンインしなさいよ。質問ご要望はツイッター@naoyakoikeまで

毎週日曜日の夜仙川キックバックキャフェのヴァラエティイヴェントに出演しております。
お暇な方どうぞ。