デュークエリントンのワクワク感

チャリンコの盗難に先日遭いまして(中学校来)、3年連れ添った相棒を失い羽をもがれた鳥のようにペタペタと歩き回っていたのですがさすがにレッドブルを飲んだところで翼は得られる訳もありません。かと言って今は亡き忌野清史郎さんの様に「返してください」とも言いませんで素直に新車を購入して参りました。
物に名前など付ける趣味は無いですが(サックスにエリザベスとかリカちゃんとか名前を付ける人とかいるんす)今便宜上トムとしましょう。トムとは色々なところへ旅をしましたよ。そりゃあ御茶ノ水まで90分掛けて行ってチェーンが往復で6回外れて手を真っ黒にして帰ってきたことや渋谷の街をデッドヒートしたりとか。まったく自転車はブルースですなキヨシローさん。さよならトム。

さてこの日記を書かない2週間ほどで30000文字は行けるだろうな、と思うのですがそんなものを書いたところで読む人は皆無、未だにてめえの日記は長すぎるなんて言われてますし。では小話をひとつ。

ここの所ツイッターをチェキされている物好きな方々はご存知だと思いますが山梨の吹奏楽部の高校生を偉そうに指導しているのですが言わずもがなとても楽しいです。
まず吹奏楽という編成(今となってはひとつのジャンルになってしまいましたが)というのは親しみはあれど実はとても奇妙なものです。オーケストラの編成からヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを抜いてその穴にアルトサキソフォン、テナーサキソフォンバリトンサキソフォンが入るのですが何故かコントラバスだけ取り残されている。人質で笑。その編成でクラシックを演奏したりもするわけですから。新しい楽器故にオーケストラに入れなかった超合理的で機動性抜群、その上木管楽器金管楽器のキメラという悪魔の笛サキソフォンの怨念を感じずにいられないという笑。
で今の時期は吹奏楽の甲子園とも呼ぶべき吹奏楽コンクールに向けての練習に彼らは勤しんでいます。これはある意味S-1とも呼ぶに相応しいものでして毎年毎年部員たちの汗と涙と唾が何トンも流されるのです。この恐ろしい闘いのルールは簡単。何曲か決まった課題曲の中から1曲と自由に選んだ自由曲1曲のパフォーマンスを審査員がジャッジするというものです。で僕も雇われの身と好奇心ゆえどれどれと自由曲を全部聴いてみるわけなのですがこれが楽しい楽しい。

例えば(http://www.youtube.com/watch?feature=youtube_gdata_player&v=cx74-LE4zNo
とまあいい感じのマーチですが、ルンルン聴いていくと1:46あたりからいきなりデュークエリントンの「A列車で行こう」(http:www.youtube.com/watch?feature=youtube_gdata_player&v=cb2w2m1JmCY)が始まってルンルンが余計止まらなくなりますこれ笑。これほんの4小節間の出来事(つまり音楽的に言えば瞬き2回ほどね)でコードが(玄人向けに言えば1度→2度7thて動いてるんですけど)まんま笑。メロディの着地(3度→b6度)もまんま笑。「A列車で行こう」をカラオケのキーチェンジ機能でマイナス2すればこの曲になるんですこれ。しかも何度も出てくるモチーフなので結局瞬き十数回分の相当でA列車を想起させる仕組みになっているのです。フラッシュバックというか昔の恋人を思い出してしまうというか笑
作曲者の方は芸大卒の期待のホープ27歳とのことであんまり色々言っていると僕が音楽業界から圧力をかけられて消されるのもあれなのですが笑、上京したときの街の賑わいにワクワクしながら歩いた思い出からこの曲を書いたそうですがハーレムに向かうA列車のワクワクとそのワクワクは重なるのかもしれませんねえ。

2曲目(http://www.youtube.com/watch?feature=youtube_gdata_player&v=5xFqC4LfPz0
akb48さんの歌、もしくはアニソンを華やかにオーケストレイションしたかのようなポップネスを持った曲です。コード進行は割りと古典的(というかマーチ自体が古典的であるというのはご勘弁)でして機能的に動いています。最初だけ超簡単にアナライズすれば(1度-7度m,2度7th-6度m-5度-4度-3度-2度-5度-)で1周という感じ。

(つまり裏を返せばakbもアニソンも古典的なものが多いわけで未だにコード進行に依存しているのです。先日来日してスマップをさもジャニーズジュニアの様に手なずけ神輿を担がせた群舞だけさせる、という快挙を成し遂げたガガ様や米ビルボードチャートにアタックする楽曲群はほとんどこのシステムとは手を切っております。逆にこのシステムと一番絆を深めたのがモダンジャズでこのシステム上でどう複雑で饒舌なアドリブを延々とるかと夜な夜な地下で名手たちは研究とカット合戦を繰り広げるわけです(同時に映画音楽とかにも派生していくのですが)。アニソンやJポップもこのシステム上に有るが故に解析しやすい。システム外に出てしまうと放し飼いの犬とかルール無用のボクシングみたいなもんで扱いきれず共通の分析の切り口がなくなってしまうのです。この様にコードが同じだのとかどうのとか言えるのもシステムのおかげでありんす)

んで作曲者は何と1988年生まれのゆとり世代!しかも理系大学卒!作曲は独学!ノットアカデミズム!笑ということで全ての謎は解けたでしょう。つまりこの曲は独学で作曲したゆとり世代がでマーチの形式を使ったポップソングなのです。どうりでポップのツボをついてるわけです。このままボーカロイドに打ち込めば立派な歌物になりますよ。

いやー面白かった。というか全然かわいい高校生たちの話はできませんでしたな。
また次回。

今夜は渋谷蔦やさんの前でストリートライブの予定です。
それから明日の夜は定例ヴァラエティイヴェントを仙川で。

それではさよなら