夏の思い出2 / コルトレーンはフリーじゃない


何だか秋らしい晩夏ですが先日渋谷の路上でストリートやっておりましたら金髪でちょっと強面のお兄さんに声を掛けられました。僕は内心どきとしながらも話を聞くと「スゲエ」を連呼されまして笑、よかったどうやらスカバンドをやっている方の様で演奏もお気に召していただけた様です。バンドにスカウトまでされました。ありがとうございます笑!が、僕が気になっているのはお兄さんのガラの悪さとか評判ではなくボタンを上から4つ外したその胸元にMAYUMIというタトゥーがあることだったんですよ笑。恐らく彼女の名前でしょうね。若しくはAKBの推しメンか。どちらにせよ彫るくらい好きなんだろうなあ微笑ましい、なんて思っているとそれから「この前彼女にプレゼントをあげた」などと始まったわけです。
僕も(あMAYUMIさんのことね)と思いながら聞いているとそのうち「彼女に蹴られた」「携帯を真っ二つに折られて仕方なくウィルコムを使っている」と話の雲行きが流石におかしいことになってくる(胸元をチラつかせながら)。これはまさかMAYUMIにDVか何かでもされていて暗に僕に胸元で助けを求めているんじゃないのか?「MAYUMIから助けてくれ俺を」というメッセージを投げかけているんじゃないか?という念に駆られ、どんなドラゴンタトゥーの女なんだよMAYUMIって。と軽口を吐くや否や彼のウィルコムが着信し「アユミ?」と呆気なく応答。一通り話してから切って「またライブ行きますね、頑張ってください!」と駆けて行ってしまいました。
結局あのタトゥーを彼が自発的に彫ったのか、それとも彫らされたのか、若しくは掘るのか掘られるのかといった諸問題は闇の中。さらに間違いなく彼が「アユミ」と言っていたことから実は胸の文字がM.AYUMIであった、という可能性(更に何故AYUMI.Mではないのか?E.YAZAWAの誤植なのか?ということまで含め)までも急浮上。謎が謎を呼び背筋が冷える夏の思い出となりました。

さて、そんな怪談めいた話はさておきですね笑、今年のジャズ界の大きなニュースの一つは間違いなくコルトレーンが晩年テンプル大学で行ったライヴの歴史的発掘が挙げられると思うのですがまじで凄いですねこれ。ツイッターでも呟いたのですがちょっとわかりづらかった様なので僕の発見をまとめると。

1)フリージャズじゃない大文字のジャズ史によるとコルトレーンは60年以降前衛化しどんどんフリーに傾倒していくというのが鉄板で僕もその様に理解していましたが、リズム隊<ピアノ、ベース、ドラム、パーカッション×3>によって形成されたアフリカンポリリズム(コルトレーンは多角的リズムと発言)状態なだけで基礎パルスは存在していて勝手な演奏をしているのでは無く、リズムの更新に目を向けていたことがわかる。

2)コルトレーンが雄叫びをあげるサックスで、ではなく自分の声を曲中使用している。

3)マイケルブレッカーが客として見ていたこのライヴでサックス奏者として踏み出す決心をしたそうです。

4)飛び入り可だった20歳前後のアルトサキソフォン奏者がコルトレーンに呼ばれて乱入している。ぴょんぴょん飛び跳ねて吹いていたそうです(若者にとってロックやパンクの様な衝動をこの時のコルトレーンの音楽は備えていた事がわかる)。

5)締めは「私のお気に入り」

コルトレーンはオーディエンスに対するサーヴィス精神があったと思われるセットリスト。マイルスマナーを彼は捨てなかった。

こんな所ですかね。藤岡さん(この音源の発掘者!!)による日本語版の激ヤバ解説も含めとても示唆に富む発掘音源だと思われます。コルトレーンの晩年はまだまだ研究が待たれるところでありますな