甲州産女流文学のヤバさ

甲州最前線や火と風を立ち上げてからというもの、山梨は本当に侮れんなあと思うことしばしばですが辻村深月パイセンには本当に参った。同じ山梨は笛吹市に生まれて幅広いサブカルを吸収して成長したってとこは全く同じなのですが底が知れない知識とクリエイティヴィティだな、という印象。

最近のライトノベルという物を僕は殆ど読んだことが無いのですが去年「船を編む」という話題の本を読んだんですね。これがまた無茶苦茶読みやすいんですよ。でも読みやすすぎた笑。展開の速さと難しいところには手を付けないところがヒットした理由に挙げられると思うのですが、神保町を部隊にしながら「古書」という単語が登場しない点とオンライン辞書や対ウィキペディアの問題に全く触れないというのには特にがっくり来てしまいました私。つまり<ストレイトアヘッドな装丁に身を包んだラノベ>だったわけなんですよ笑。これと反対なのが<萌え絵の装丁に包まれた理論書>つまり「もしドラ」の類なわけですけども。

しっかし辻村パイセンはそんなラノベ乙一式のカラクリなどと一線を画していたので、もう万歳をですね何度したかわかりません笑。まず時間の描写の組み立てが上手い。エピソードの提示の順番が見事(恐らくジョジョ由来なんじゃないかと睨んでいます)。文体も申し分無し。描写は刺さってくるしもうダイスケ的にもオールオッケーです。
さらに先日某大学で行われた「ドラえもん」の新作映画のスピンオフイヴェントで「ドラえもんから大人/子どもを考える」というヤバそうなシンポジウムが開かれたのでいきましたが、そこでもパイセンは「出産したけど私は未だに自分が大人だとは思わない」、「近代に子どもという概念が発見されたとするならば、現代で私たちが大人を発見するのかもしれない」、「ドラえもんは大人でもあるし子どもでもある」などの中々示唆に富む発言をされていてときめく僕でしたが学生の司会の方が話を核心に迫る進行に持っていけなかったのが本当に残念でした。僕も頑張って質問したんですがライヴより緊張しましたよ。沢山ののび太君と辻村リスペクトの文学女学生に囲まれて27のおっさんがニューエラのキャップ被ってマイクもってガクガク震えてるという笑。

てことでもう十分好きになってしまったのですが笑、パイセンの特集が組まれているというので今月号の「ダヴィンチ」を近所の本屋でどれどれと立ち読みしていたら何と安孫子武丸先生が彼女についてコメントしているんですよ。「かまいたちの夜のロケ地になったペンションに行くツアーのメンバーに最近辻村が仲間入りした」みたいなことが書いてあるわけです!そのペンションてクヌルプと言うペンションであのフクロウの看板があって、というサウンドノベルに興奮して関連書を立ち読みしまくっていた僕の小学校時代をこんなにもリマインドさせるなんて!とか言い出しまして、完全に恋してしまい笑、著作を頑張って辿っておる次第です。今のところ僕のお気に入りは「鍵のない夢を見る」かな。言葉って鋭利な刃物なんだなということが改めて解ります。

とりあえず山梨産の文学は【樋口一葉林真理子辻村深月】という女流作家ラインがかなりキーです。
各人の作品が時代時代の<女><女の子><女子>を代弁、又は解放していると思われ大変興味深いのでどなたか卒業論文のテーマにされては如何でしょうか。