ナイトインシャンハイ予告


『上海の夜』@下北沢サーカス
前売¥2000+1d 当日¥2500+1d
オープン18:30/スタート19:30
出演:Mr.Elephants
dff ft.茜空+hositky
アートワーク:中山晃子
題字:徳山史典



【100年後の上海の夜】

20年代(と言っても東京オリンピック以降の近未来のことではなく1920年代のことだ)にエコール・ド・パリの一人として日本人の藤田嗣治がいた。
という事実はごく当たり前な検索結果。

天性の才能と鍛錬で独特の画法を確立した彼は20年代のパリに於いて日本人でありながらスーパースターの座を欲しいままにし、パリジャン/パリジェンヌにお調子者という意である「フーフー」と呼ばれ親しまれていた。
という事実もごく当たり前な検索結果。

そして藤田自身の著書「パリの昼と夜」によると当時彼がパリで企画した「上海の夜」という舞踏会でフロアに5000人を集めた、という大変興味深い記事がある。DJでも音楽家でもなく画家がオーガナイズし、しかもパリで日本人が上海の夜という何だか滅茶苦茶なダンスパーティに5000人とは今の感覚では想像もできない。
しかし、この事実はネット上の何処にも見当たらない。

つまり「検索結果に表示されない情報は無きに等しい」とウェブサイトの最適化に励む、言わば検索ランク競争が繰り広げられている現代に於いてこのとんでもなく面白い記述は存在しないということになる。
要するにこれは全能の様に見えるネット世界の死角なのだ。

ならば僕が100年後の「上海の夜」を捏造してやろうと思う。そう易々とグーグルに世界を整理させてたまるか。

僕のdffはこの為にこしらえた様なバンドだ。dffのキーワードはジャズ/ポリリズム/日本語ラップ/ギャル文化。そして所謂クールジャパンという言葉の本質にあるのは、受容と寛容と調和であるからして、パリで日本人が上海というコラージュ感覚にシンパシーを感じずにはいられない。

ニューチャプターとか今ジャズだとかヒップホップとか言ってもあれは海の向こうの話だ。日本でやってもあまり意味がない。チャーリーパーカーやマイルスデイヴィスからロバートグラスパーまでの流れにある本質は更新と変化である。それに未だ日本のニューチャプターはまとまった形で紹介されていない。これは批評でもある。

愛するジャズを中心に据えた新しいダンス(または非ダンス)パーティとして「上海の夜」を上書きしていく。
それが僕のインターネットに対する唯一で、そして小さく、だが強くて確かなカウンターなのである。


2015.3.5 小池直也